ブレーキがきかなくなり、大通りから一本路地に入ったあたりで
なんとか停めることが出来たものの、帰れなくなる。
運よく通りがかったお巡りさんによるとたまにあることらしい。
「ああこれはエンジンがどうのこうの、」
と僕の知らない単語を煩くない程度に並べた上で、
ちょっと時間かかるけど直してあげると言ってもらう。
お巡りさんに直してもらっている間、
ちょうど居合わせた風俗嬢のはからいで、
その人がオーナーの風俗嬢のシェアハウスに居候させてもらうかわりに、
家のお手伝いをすることになる。
少し進んで路地を左に曲がったところにある、
シェアハウスの嬢たち。
みなの僕への扱いは手荒いが、挨拶はしてくれる。
嬢たちのOFFの顔。かわいい。
慣れない洗濯。
日々。
オーナー嬢と口論になり、
みんなが見てる前でマウントの取り合いになる。
身長差もあるし力では負けないけれど、
この人には適わないなと思いながら抑え抑えられしていたら、
力を抜いたわけではないが、
騎乗位のような体制でおさえつけられたので、
どうやら負けてしまった。
まわりの嬢たちにはやしたてられる。
日々。
お巡りさんは、僕がいいなと思うお姉さんに予約をいれていて、
うんそうだよね、と思う。
2時過ぎ、「じゃあね~いってくる~」と、いつものあっけらかんとした言葉を残して、
お姉さんはお巡りさんと2人で、隣の平屋へ入っていった。
雨はもう降っていなくて、
どちらかというと蒸し暑いが不快な感じはしない。
併設のバーのお手伝いもさせてもらっていたら、
なにかの撮影がたまたま入る。
カメラを見ると、僕はお客さんの背中越しに何かの話でクックッと笑っていて、
そこで一緒になったスタッフの二人のイケメンのうち、
隣の金髪の人と、あとでいい感じになる。
なんかの都合で、帰ることになる。
嬢たちに、玄関口で男物の下着を、餞別だよ、とちゃかした感じで渡される。
どう返したらいいのか言葉が出てこなくて、
「間に合ってます」とよくわからない返事をしたのち、
結局、4枚全部受け取ることにした。
オーナー嬢にお礼を言われ、
キスをしたくなったのでキスをしたら、
え、なんで?という顔をされた。
僕もあれ?という顔をした。
先輩が京王線で帰ると言い、
ひとまず途中の新宿まで一緒に帰ることにしたけれど、
車を直してくれていたお巡りさんはお姉さんとの時間になってしまっているので、
結局まだ車は治っていないことに踏切のあたりで気づく。
そういえば21時に荷物の受け取りをするよう言われていたっけ、
どのみちまたあとで戻らないとな、と頭の中で時間の算段をつける。
夕日はさっき沈んでしまい、
白線の上をなぞって歩くもののほろ酔いのために上手く歩けない。